しべちゃコラム
標茶をもっと楽しむためのページ「しべちゃコラム」。
おすすめのお店や観光ルートなど、ちょっと気になる話題をお届けします。
旅の前に、ちょっと寄り道。いろんな視点のコラムで魅力をのぞいてみませんか?
本州からの移住者が楽しむしべちゃ旅
5年前の2020年に大阪から釧路へ移住。この5年の間に北海道内の町をたくさん回ってきたけれど、どの町にも共通して感じることがあります。
それは「町のスケールが大きすぎる」ということ。
標茶町(しべちゃ)もそのひとつです。
その面積はなんと1,099平方キロメートル。東京都全体のほぼ半分にあたります。もう一度言いますが、「町ひとつ」で東京都の半分です。北海道の広さを実感せずにはいられません。
地図を見てみると、標茶町は南北に長く伸びています。
町の中心である市街地は北側にあり、そこから南へ車を走らせると、風景が少しずつ変わっていきます。
牧草地と森が続くエリアを抜けると、低木が増え、空がどんどん広くなっていく。やがて川や湖が現れ、あたりはしっとりとした湿原の気配に。
そう、この町の南側は「釧路湿原国立公園」に含まれるエリア。あちこちに湖や沼が点在しています。
その中でも今回訪れたのが、塘路湖(とうろこ)です。
釧路市からも近く、湿原の中では最も大きな湖。
山と湿原、そして緩やかに流れる川に囲まれたこの湖では、季節ごとに水辺ならではのさまざまな野鳥や動植物が見られます。その豊かな自然から「カヌーの聖地」とも呼ばれているそうです。今回は、そんな塘路湖でカヌー体験をするために、地元で長年ガイドを続けている「レイクサイドとうろ」さんを訪ねました。
PEOPLE
カメラマン:崎 一馬
1996年大阪府出身。2021年に釧路市へ移住。同年よりカメラマンとして釧路・道東を拠点に活動をスタート。 家族写真・記念写真撮影、Web記事やHP用素材のほか、ドローンを活用した撮影なども。 生粋のクルマ・ドライブ好き。
湖の静けさを感じる場所 ― レイクサイドとうろ

国道391号から1本入ってすぐ。塘路湖のほとりにある〈レイクサイドとうろ〉は、30年以上にわたってカヌー体験を案内している老舗のガイドハウスです。
大きな三角屋根の建物、裏の湖岸にはたくさんのカヌーが並び、朝の空気に包まれながらゆったりとした時間が流れています。
「10月〜11月のこの時期が僕は好きですね。紅葉も深くなってきて自然の深みをしっかりと感じられるのがとてもいいんです。」
そう話すのは〈レイクサイドとうろ〉の代表・土佐 武さん。

「塘路湖の魅力はどの季節にもあるんです。春は新芽の柔らかい緑、夏は深い緑、秋は今まさに見える紅葉、そして冬は霧と氷の世界。だから、一度カヌーを体験したことがある人でも季節を変えて来ると全く違った風景が見られるんですよね。」
特に冬の塘路湖は、息をのむような美しさがあるそう。
「とにかく寒いですけどね(笑)。湖が凍るまでは冬でも湖上カヌーができますし、凍ってしまったら川に出てカヌー体験をします。朝に川霧が立ちこめて、木々が凍って樹氷になると、まるでガラスの森みたいです。オオワシも飛んできますし、静かなのに生命感がすごくあるんですよ」
一年を通して、カヌーを体験できるのが魅力的。同じ塘路湖でも春夏秋冬の違った風景を体験できるので、何度も通うお客さんが現れるのも不思議ではありません。
“ひっくり返らない”カヌーの安心感

「カヌーは全て自社開発しているんです」
土佐さんの口から思いがけないこんな言葉が飛んできました。
なんとレイクサイドとうろで所有している全てのカヌーを自社で開発されているそう。
「既製品のカヌーだと観光にはちょっと不安があるんです。危険と言いたいわけではありませんよ。レジャー利用では十分な安定性があります。ただ、お客さんの命をお預かりする以上、どうしても不安が払拭できなくて。だから、自社で設計してつくりました。」
実は土佐さん、塘路湖エリアを拠点とする漁師の顔も持っています。船を扱うその経験を生かして設計されたカヌーは、安定性がとにかく抜群。
「30年以上やっていますが、ひっくり返ったことは一度もありません」
実際に乗ってみると、湖面を滑るようにスーッと進むのに、揺れはほとんど感じません。小さな子ども連れの家族でも安心して乗れるよう設計されています。
塘路湖カヌーへいざ出航

「レイクサイドとうろ」では、
- 釧路川カヌーツーリング【塘路湖~細岡までの約9㎞コース】(約2時間)
- アレキナイ川カヌーツーリング【塘路湖~支流往復の約6kmコース】(約1時間)
- 釧路川カヌーツーリング【約15kmロングコース】(約4時間)
- 塘路湖カヌーツアー【塘路湖内周遊】(約1時間)
など、塘路湖そして周辺の釧路川・アレキナイ川を利用した様々なコースが設定されています。
【詳しくはこちら】
今回は、その中でも塘路湖と湿原の空気を感じられる「アレキナイ川カヌーツーリング【塘路湖~支流往復コース】」を体験することに。

まずは、安定する座りかたや姿勢、パドルの正しい使い方など、カヌーの基本を塘路湖上で教えてもらいます。山に囲まれて比較的穏やかな湖面でカヌーというものにまずは慣れる時間です。
しかし、それでもそこはまさに大自然のど真ん中。秋の心地よい風と赤く染まった山肌、そして湖を自分の好きなペースで漕ぐ。こんな優雅なひとときはほかにありません。
「じゃあ、川の方に進路を変えて漕いでいきましょうか」
土佐さんのアシストのもと、塘路湖から釧路川へ続く支流・アレキナイ川へカヌーを進めていきます。

塘路湖からアレキナイ川へ入る入口。ここは車、人、列車用の3つの橋をくぐることから始まります。ワクワクさせられるような冒険感がたまりません。
この橋を越えた先は、釧路湿原の中を流れるアレキナイ川。人の手がほとんど加えられていない真の自然の中へと進んで行きます。

カヌーを漕ぎ進めていくと、車の音など聞こえない、風とパドルで水面を叩く音だけが聞こえる世界に。耳をすませば鳥のさえずりや、魚が慌てて逃げる水の音など自然の音が聞こえてきます。

この時期は運が良ければ、サケ・マスの遡上が見られるそう。この日は先日の大雨で川に濁りがあり、魚の姿をはっきり確かめることはできませんでしたが、バシャバシャとカヌーにびっくりして逃げる魚が至るところで見られました。この中のどれかが、サケ・マスなのかも。

ここは釧路湿原の中。
湿地で地盤が緩く、根を深くまで張れないため背の高い木はほとんど存在しません。まるでサファリのような世界です。水の中から生える木々など、周りに見える風景は、普段私たちが住んでいるエリアでは想像もできない世界があちらこちらに広がっています。
ガイドさんの解説も興味深く、そして見える風景に見惚れていると、漕ぐことを忘れてしまいます。標茶の中心地、釧路市から車で30分程度の場所とは思えない、もっと世界の果てまできてしまったのではないかと思ってしまう。そんな風景と世界がここには広がっていることを身をもって体験することができます。

約1時間のカヌー体験を終えて、塘路湖へ。
晴れた秋空のもとゆったりと湖面を漕ぐ時間は本当に忘れられないひとときになりました。
カヌーだけじゃない。塘路湖のまわりで育つにぎわい

最近では、塘路湖の周辺にカフェやバーガーショップ、さらにはホステルにサウナなどが増え、少しずつ観光の動きが生まれています。
「前はほんとに静かな場所だったんですけど、自然を楽しみに若い人たちも来るようになって。のんびりできるし、景色がいいから、また来たくなるって言われますね。」
「塘路湖のアクティビティでいくと、これから冬にかけては”わかさぎ釣り”もできます。うちで機材のレンタルもやっているので手ぶらできてもらって大丈夫。塘路湖はよく釣れますよ!」
標茶町の市街地から、釧路市から車で30分ほど。
ふだんの生活からほんの少し離れるだけで、まるで時間の流れが違って感じられる場所です。
おわりに
湖岸から眺める風景ももちろん美しいですが、実際に水の上に浮かぶとそれは全く別の景色に。湿原の中に入ってしまえば、自分がこの大自然の中で生かされているということを身をもって再認識させられるそんな瞬間でもあった気がします。
カヌーは本当に揺れが少なくて怖さも全くありませんでした。今回は僕とガイドさんの2人だけで乗りましたが、お友達や家族と一緒に乗り合いで乗るのも楽しそう。
カヌーに乗り終えたあとは近くのカフェや雑貨屋さん、サウナ好きならサウナにいくのもいいですよね。
「自然の中で思い思いに過ごす」という贅沢が、この塘路にはありました。
ぜひ、塘路で“自分だけの一日”を過ごしてみてください。

INFOMATION
レイクサイドとうろ
(所在地)北海道川上郡標茶町塘路原野北8線73−番地
(営業時間)9:00〜17:00
(定休日) 不定休
(TEL) 0154-87-2172
(E-mail)lakeside@shitsugen.com